入れ歯の話etc
良い入れ歯とは歯にフィットし顎の筋肉に正しく連動し、良く噛むことが出来る違和感の無い入れ歯です。反対に良くない入れ歯はしっかりお口の中で固定できずにガタガタ口の中で動き、噛む能力が低く更に、顎の骨や顎の筋肉を損なう入れ歯です。当然、歯科医は良い入れ歯を作ることに努めますが、それはたやすいことではないのです。高い専門性の要求される工程の積み重ねに加え、性別、年齢 顔の形 顎の形 髪の色まで考慮して作る入れ歯は、歯科医師、技工士共にセンスが問われます。関谷歯科医院で長年パートナーを務めてくれている市川技工士の東京医科歯科大学の同窓でアメリカで成功している方がおられるそうです。日本人の手先の器用さ緻密さ繊細な作業は世界中で驚嘆されるレベルだというのもうなずけます。中国製の技工物に有害物質が含まれていて問題になりましたがそれは技術レベルの低い技工士が大量の発注に応えるために金属の加工を容易にする物質を配合した結果でした。
日本では入れ歯安定剤が広く普及しているのでしょうか?入れ歯安定剤を常用している方がおいでなら、入れ歯の出来を疑ってはどうでしょう?。米国では入れ歯安定剤は歯科医師の処方でのみ使われます。入れ歯安定剤の使用で快適になったと答えるのは合わない入れ歯を使用している方で、合う入れ歯を使用している方はあまり変わらないと答えます。ただし、入れ歯安定剤が効果を発揮する場合があります。それは唾液の分泌が少ない方、入れ歯を支える役目を果たす顎の骨がやせて土手のような形を形成せず平坦になっている方の場合です。入れ歯でお悩みの方は多いのですが、大切なことは、入れ歯の装着に違和感を持たれたら、あきらめたり自己判断に頼らずぜひ専門医にご相談なさることです。
私は長年入れ歯をつくり、患者様へと送り出してきました。送り出した入れ歯は患者様各々の体の一部となって生活を支えます。良く噛めるということは具体的にどのような変化をもたらすでしょうか。良い入れ歯は繊維質のもの、固い物を良く噛んで食べることが出来ますから、栄養の偏りもなく胃腸の消化吸収を助ける唾液も良く分泌されます。栄養状態が良くなり体力も維持でき、さらには歩行もしっかりするというデータがあります。
良く噛めるということは、脳の活性化にもつながります。物忘れがひどく認知症のような症状のみられた方が相談にいらっしゃいました。歯茎にあたる部分がソフトな素材でできた咀嚼能力に優れた入れ歯に変えたところ徐々に元の健康状態を取り戻されました。入れ歯を造った私自身が目を見張るようなことが起こります。噛む事によって脳の血流が活発になることは実験により確かめられています。しかしそのほかにも歯が痛い、良く食べれないというストレスから開放されたり周りの方と同じものを味わって食べる楽しみを得ることがご高齢の方には大切なのです。
味覚は舌で感じますが口蓋でも温度、やわらかさ固さを感じます。口蓋を覆うため味覚が損なわれるので入れ歯が嫌だという方は多いと思います。無口蓋入れ歯や、口蓋部を金属で薄く造り熱伝導に優れた入れ歯もあります。これらの特殊入れ歯は専門性が高く技術に大きく差が出ます。さらに費用も保険診療の適用外なのですが、優れた素材でできた入れ歯は定期的にメンテナンス調整すれば長年使ってゆくことができます。